1995年はインターネット業界にとってとっても熱い年だったと思う. NetScape社の株式上場でインターネット長者も出たし,マイクロソフトは Windows95にMSネットワークの接続パッケージを含めることでインターネットの 正式サポートとネットワーク市場への本格的進出を計った.国内では いわゆるインターネット雑誌の創刊ラッシュとインターネットサービスプロバイダ 設立ラッシュ.これはまさに20年前のマイクロコンピュータブームの再現と感慨に ふけるのは私のような40代のおじさんたちのノスタルジーかも知れない.
と,ぶつぶつ言いながらこの原稿を書いているコンソール画面には最新版のNetScapeの ウィンドウが開いている.そして,その上ではJava言語で書かれたアプレットが 動いている.実にたわいないデモプログラムである.例えばNetScapeの画面の上で 風船が上がって行くとか,フラクタル画像がインタラクテイブに書けるとか. だからどうしたという程度のものである.これがいわゆるJava, 汎用ワークステーションの雄,SUNが開発して普及をねらっている.
似たように見えるが全く違うWWW上のアプリケーションにWebSpaceというのがある. これはVRMLという記述仕様でかかれた3次元モデリングデータをクライアント側で 3次元CG化して表示するもので,シリコンのグラフィクスワークステーションが 使えるのならば素人を驚かせることができる.こちらはグラフィクスワーク ステーション界の雄,SGIが仕掛ている.
どちらもWWWの枠組みの中でアニメーションを取りいれる事に使われるので どっちが優位かと比較されがちだが,林檎と蜜柑を比べるようなもので次元が 違うと考えた方がよい.
私はCG大好き人間なので,最初に触れたのはVRMLの方だった.よくできたシステム で,仮想現実感をWWWに持ち込むための仕掛としてそれなりのインパクトがある. マウスで画面をクリックするすると3次元の空間を歩き回ることができるし, その中にある3次元オブジェクトにはアンカーが打たれていて,それをクリックすると 別な空間にジャンプしたりする.
WebSpaceいわく,''Because our world is not flat''. 確かに我々が棲んでいる 空間は2次元ではない.WWWのユーザーインターフェースも2次元よりは3次元が良いと 言いたいのも良く解る.だが,肝心の画面は所詮2次元なのである.それをユーザー インターフェースに使うという所に無理がある.技を見せびらかしたい気持ちは 解るが,すこし技に溺れているという感が拭えない.
それに対するJava,こっちはWWWクライアント上でのプログラミングモデルと 機種依存しない中間コード形式によるプログラム配布が エッセンスとなる.事情通に言わせると,所詮は昔話題にはなったが流行らな かったUCSD Pascalと P-codeインタプリタのようなものということになる.
両方触ってみて,私が受けたインパクトはJavaの方がはるかに強かった. Hot Javaは熱いのである.
言語仕様がきれいとか,実行速度が速いとかいう問題ではなく,インターネットという 環境でプラットホーム依存なしでアプリケーションプログラムが配布できるという ことが熱い.所詮WWWの中の話と考える人がいるかも知れないが,Java言語は それ自体完成した言語仕様な訳で,WWWから離れて独立したコンパイラも作ることが できる.つまりJavaで書かれたプログラムは,それを中間コードコンパイルしてWWW で配布すれば機種依存なくクリック・アンド・ゴーで実行でき, 専用コンパイラで特定機種向けのオブジェクトを吐けば他の言語と同様の速度で 実行可能となるのである.
中間コード形式はもともとは多数のCPUアーキテクチャに対するコンパイラ 作成技術として開発された方法であるが,それがインターネットという究極の マルチプラットホーム環境におけるプログラム配布のメカニズムとして再浮上して きたという訳である.もちろんインターネットが一部研究機関やテクノフリークたちの 専有物だったならばそれほど熱いものではないだろうが,いまやインターネットは 普通の人々のもの.仕掛の議論ではなく,それで何ができるかが一番重要なこと なのである.今出回っているデモプロはどれもトイプログラムで,今一つインパクト がないが,その真価を発揮する実用的なプログラムが出現するのもそう遠くない だろう.その時にJavaのアプレットを高速で実行するWWWブラウザはNetScapeの 次のキラーソフトウェアとなりうるのである.
長い冬の夜長に熱いジャワコーヒーをすすりながらJavaのプログラミングと いうのはおしゃれかもしれない.