仮想と現実の相互作用を有するAR紙相撲システムに関する研究

概要

 近年,AR(Augmented Reality,拡張現実)技術の発展により,仮想世界と現実世界はより密接なものとなってきています.既存の研究では仮想から現実へ,現実から仮想への作用は起こすことができますが,双方向同時に同様の作用を起こすことができるといったものは今までにありません.そこで現実と仮想をお互いの世界に干渉させることによって新しい形のインタラクションの可能性を見つけようと考えました.

 本研究では同時に作用を確認できる「リアルタイム性」と仮想と現実が干渉した際に同様の振る舞いをみることができる「対称性」を満たすものとして,「紙相撲」に着目して,仮想と現実の相互作用を有するAR紙相撲システムの開発を行いました.

 現実から仮想へは現実の紙力士の動きをセンシングすることで干渉を実現できますが,仮想から現実への干渉は現実世界へのフィードバックを起こすことができる仕組みが必要となります.本研究では「電磁石」を用いて土俵の下に設置し,現実の紙力士の足元に磁石をつけることによって磁石の反発力による干渉を実現しました.


図:システム概要

動作ムービー(マーカレスver)

図:電磁石

図:土俵裏

図:Arduino+制御回路

 

難しかった点

・コンピュータからの物体の制御は精密に行わねばならず,パラメータの調整が難航した.

・仮想と現実のインタラクションを行うインタフェースは,VRでは没入感を深めるのが課題であるのに対し,ARではより仮想のオブジェクトや作用を現実に溶け込ませて現実感を損なわせないることが課題であるため,装置やオクルージョン(隠れる)表現をどうすべきか悩んだ.


今後の課題

・自然特徴点認識の強化

・電磁石動作の精緻化

・紙相撲以外への応用(人型サイズの3Dモデルと触れ合えたら面白いですね)