アドホックなネットワークコミュニティのための多視点ライブ映像共有システムに関する研究

Multi-view Live Sharing and Recording System for Ad Hoc Network Community

概要

 本研究は、個人が簡単に多視点映像を撮影できるようなシステムを提案するものです。

多視点映像とは、いくつかの視点からの映像が繋がってできた映像です。たとえばテレビのニュースでスタジオ全体とアナウンサーの顔の映像が切り替わったり、映画で主人公の表情からその場面全体へ映像が切り替わったりするのを見たことがあると思います。テレビなどで放送されているプロが作った映像はほとんどが多視点映像です。

 ところが、同じ映像を個人が撮影しようとするといくつか問題が持ち上がります。

視点を切り替えるためには複数のカメラで同時に撮影を行い、それを後から編集する必要があります。個人で複数のカメラを所有するのは出費が大きいですし、そもそも撮影者のあてがつかない場合もあります。あとから映像を集めて編集を行うのも骨が折れます。

 しかし、個々人で複数のカメラを所有することは難しくても、複数のカメラが偶然一箇所に集まることはよくあることです。例えば小学校の学芸会やアマチュアのライブ会場では複数名の個人がそれぞれ別個にカメラを回していることがよくあります。これらのカメラが繋がっていて、お隣さんのカメラの映像を拝借することができれば、そして欲を言えば撮影中にボタンひとつで違うカメラの映像に切り替えることが出来れば、個人でも手軽に多視点映像を作成することができます。

図:本システムのプロトタイプを無線LANアダプタとUSBカメラが付いたノートPCで実装したもの。クリックで映像切り替えが可能

動作ムービー

 本研究は、まさにこのニーズを実現します。幸いにして、最近はカメラと無線LANが一体となった端末が数多く存在します。本システムは、これらの端末を利用して、撮影した映像をそのまま無線LAN上へUDPブロードキャストを用いて送出し、別の端末で利用できるようにしています。例えば、自分のカメラ映像を録画&送信しながら、他人のカメラ映像を受信し、その中から好きな映像を選んでその映像に切り替え録画を続けるといったことが可能です。この際、プレビュー用に映像を受信している時にはUDPの利用により低レイテンシーを維持しつつ、録画用に映像を受信している時には損失パケットに対して再送要求を行い、よりロスの少ない映像を録画するなどの工夫をしています。

苦労した点

 当研究室が入っている情報基盤センターでは、各研究室毎に無線APを設置していたため電波の干渉が酷く、なかなかパフォーマンスがでませんでした。そこでノートPC×4を家まで担いで返り、弟に協力してもらいながら実験を行いました。